工場の煙突が持つ役割から、建築基準法などの関連法令、最新のドローン点検手法、アスベスト対策まで、工場管理者が知っておくべき煙突の基礎知識と安全管理のポイントを網羅的に解説します。

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【2025年明確化】煙突の「清掃作業」も石綿則の対象に

煙突の清掃とアスベスト対策


煙突の内部清掃や補修を行う際は、アスベスト(石綿)の有無を事前に確認することが法的に必須です。2025年の通知により、従来は解体・改修が中心と考えられていた規制の適用範囲が、清掃作業にも及ぶことが明確化されました。


2025年に明確化された清掃作業への石綿則適用


厚生労働省の2025年の通知により、煙突の「清掃作業」も石綿障害予防規則(石綿則)の適用対象であることが明確に示されました。これにより、清掃を発注・実施する際にも事前調査が必要になります。


背景には、古い煙突の内部に使用されている断熱材の問題があります。煙突内部の断熱材には、石綿含有煙突断熱材(レベル2)が使われているケースがあり、これは飛散性が高い建材に分類されます。清掃作業でブラシやスクレーパーを用いると、堆積物とともに断熱材が削られ、石綿繊維が飛散するおそれがあるためです。


「解体ではなく清掃だから対象外」という従来の認識のまま作業を発注すると、法令違反となるだけでなく、作業員や周辺への健康被害につながります。この点は、設備管理部門だけでなく、発注を担当する購買部門にも共有しておくべき重要な変更点です。


アスベスト事前調査の進め方


事前調査は、おおむね次の手順で進めます。


  1. 書面調査:設計図書、竣工図、過去の改修記録、材料の仕様書などから、石綿含有建材の使用可能性を確認します
  2. 現地目視調査:有資格者(建築物石綿含有建材調査者など)が現地で建材の種類と状態を確認します
  3. 分析調査:書面と目視で判断できない場合、試料を採取して分析機関で含有の有無を判定します
  4. 調査結果の記録と報告:一定規模以上の工事では、所定の方法で行政への報告が必要です
  5. 作業計画の策定:含有が確認された場合、レベルに応じた隔離養生・negative pressure(負圧除じん)・保護具の仕様を定めます
  6. 作業記録の保存:作業内容と measurements(粉じん濃度測定結果)を定められた期間保存します
書面調査で「石綿なし」と判断するには、着工日が明確で、かつ石綿が使用されていないことを示す根拠が必要です。古い煙突ほど図面が散逸していることが多く、結果として分析調査が必要になるケースが多くなります。

レベル区分と必要な対策


レベル該当する建材の例飛散性主な必要措置
レベル1吹付け石綿非常に高い隔離・負圧除じん装置・特別な保護具
レベル2石綿含有煙突断熱材、保温材高い隔離養生、湿潤化、呼吸用保護具
レベル3成形板(スレート等)比較的低い切断を避ける、湿潤化、手作業優先
煙突内部の断熱材はレベル2に該当することが多く、除去時には隔離養生と厳重な管理が求められます。作業計画の段階で、近隣への事前周知や、作業区域の明示を含めた段取りを組んでおくと、トラブルを避けられます。

煙突の解体・補修工事における安全管理


煙突の解体や補修は、高所作業・火気作業・粉じん作業が重なる、工場設備の中でもとくにリスクの高い工事です。作業中だけでなく「作業後」の管理も含めた計画が必要です。


火気作業後の残熱による火災リスク


2026年9月、損傷した高さ110mの煙突の解体工事中に火災が発生しました。鉄枠の切断作業を終えた後に出火したもので、火花が消えたように見えた後の「残熱」による発火リスクと、作業後点検の重要性が指摘されています。


煙突の解体では、溶断やグラインダーによる切断が多用されます。このとき発生する火花や高温の金属片は、煙突内部に堆積したすす・タール分、保温材、仮設の養生材などに入り込むことがあります。表面上は鎮火したように見えても、内部で燻り続け、数時間後に発火するケースがあるのです。


火気作業における実務チェックリスト


火気作業を伴う煙突工事では、以下の項目を作業手順書に組み込むことが推奨されます。


  • 作業前に、火花の飛散範囲にある可燃物をすべて除去または不燃材で養生する
  • 煙突内部の堆積物(すす・タール)を事前に清掃し、着火源となる物質を減らす
  • 火花の落下経路を想定し、下方の開口部を塞ぐ
  • 消火器・消火水を作業位置の近傍に配置し、使用可能な状態を確認する
  • 作業中の火気監視員を専任で配置する
  • 作業終了後、一定時間(一般に数時間程度)の監視を継続する
  • 監視時はサーモグラフィなどで温度を確認し、異常な発熱がないことを記録する
  • 最終退出前に、作業区域全体を巡回点検して記録に残す
このうち最も見落とされやすいのが、作業終了後の継続監視です。作業員が引き上げた後の時間帯に出火すると、発見が遅れて被害が拡大します。監視時間・監視方法・責任者を手順書に明記し、形骸化させないことが重要です。

解体工法の選択


煙突の解体には複数の工法があり、立地条件や高さ、周辺状況によって選択します。


工法概要向いている条件留意点
上部からの人力解体足場やゴンドラを設置し、上から順に解体近接構造物が多い市街地工期が長く、仮設費用が大きい
クレーン併用解体クレーンで部材を吊り下ろしながら解体十分な作業ヤードがあるクレーンの設置スペースと揚程が必要
機械解体(重機)高所解体機などで上部から崩す低〜中層で周囲に余裕がある粉じん・騒音対策が必要
内部解体(内側から)煙突内部に作業床を設け解体外部に足場を組めない場合作業環境が狭く、換気と粉じん管理が重要
いずれの工法でも、解体前のアスベスト調査、周辺への事前周知、粉じん・騒音対策、そして倒壊方向の管理が共通の必須事項です。とくに損傷した煙突の解体では、構造的な健全性が低下しているため、解体の進行に伴う重心変化や予期せぬ崩落を想定した計画が求められます。
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